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20
20分ぐらいそんな状態が続いた。
周りのスポーツをしている人たちから見ると、かなり場違いというか目立つ光景だったと思う。
その間ずっと好恵は泣いたまま。僕のシャツは好恵の涙が染みるほどになっていた。
「大丈夫か?」
と僕は何回か問いかけてはいたものの、状況は改善しなかった。
焦りしかなかった僕の心境には変化が生じ始めていた。
僕が好恵を向いていないとしても僕を追いかけてきてくれる好恵の僕への愛を感じることで
僕の好恵への愛が復活してきていた。
いま僕の目の前にいるのは好恵だ。好恵を見守ることに集中するのが男としての責務だ。
と、僕は自分に言い聞かせた。
夕日はすっかり暮れてしまった。
僕は少し泣きやみかけてきた好恵の両肩に手を置き、ゆっくりと好恵の顔を僕の目の前に現せた。
「好恵、、、」
好恵はまだ目をつぶりながらも涙を流していた。
そんな好恵が愛おしすぎるぐらいに愛おしく感じた。
僕はゆっくりと顔を好恵に近づけていき、僕の唇を好恵の唇に合わせた。
目をつぶっていた好恵は目を見開き動揺していたがしばらくすると目を閉じたようだった。
照明が二人を照らしつけていたが、そんなことはどうでもよかった。
好恵の愛に応えたい。僕の愛を好恵に注ぎたくてたまらなかった。
数十秒ぐらい経つとゆっくりと僕は唇を離した。
「キヨちゃん、大好き」
と言って今度は好恵から僕に向かって飛びつくように唇を合わせてきた。
周りには人がたくさんいたので、正直すごく恥ずかしさはあったと思う。
しかし僕たちにはそんなことは関係なかった。
お互いにとってお互いが一番大事だった。それ以外何も重要ではなかった。
そして好恵の唇が僕の唇から離れていった。
好恵はまだ泣き顔ではあったが、笑顔になってくれた。
「俺、やっぱ好恵のこと大好きだよ」
と無意識のうちにそんな言葉が出ていた。
好恵はニコッと笑い、僕もそんな好恵に安心した。
僕たちはすっかり日が暮れてしまった河川敷を手をつなぎながらゆっくりと歩いて行った。
周りのスポーツをしている人たちから見ると、かなり場違いというか目立つ光景だったと思う。
その間ずっと好恵は泣いたまま。僕のシャツは好恵の涙が染みるほどになっていた。
「大丈夫か?」
と僕は何回か問いかけてはいたものの、状況は改善しなかった。
焦りしかなかった僕の心境には変化が生じ始めていた。
僕が好恵を向いていないとしても僕を追いかけてきてくれる好恵の僕への愛を感じることで
僕の好恵への愛が復活してきていた。
いま僕の目の前にいるのは好恵だ。好恵を見守ることに集中するのが男としての責務だ。
と、僕は自分に言い聞かせた。
夕日はすっかり暮れてしまった。
僕は少し泣きやみかけてきた好恵の両肩に手を置き、ゆっくりと好恵の顔を僕の目の前に現せた。
「好恵、、、」
好恵はまだ目をつぶりながらも涙を流していた。
そんな好恵が愛おしすぎるぐらいに愛おしく感じた。
僕はゆっくりと顔を好恵に近づけていき、僕の唇を好恵の唇に合わせた。
目をつぶっていた好恵は目を見開き動揺していたがしばらくすると目を閉じたようだった。
照明が二人を照らしつけていたが、そんなことはどうでもよかった。
好恵の愛に応えたい。僕の愛を好恵に注ぎたくてたまらなかった。
数十秒ぐらい経つとゆっくりと僕は唇を離した。
「キヨちゃん、大好き」
と言って今度は好恵から僕に向かって飛びつくように唇を合わせてきた。
周りには人がたくさんいたので、正直すごく恥ずかしさはあったと思う。
しかし僕たちにはそんなことは関係なかった。
お互いにとってお互いが一番大事だった。それ以外何も重要ではなかった。
そして好恵の唇が僕の唇から離れていった。
好恵はまだ泣き顔ではあったが、笑顔になってくれた。
「俺、やっぱ好恵のこと大好きだよ」
と無意識のうちにそんな言葉が出ていた。
好恵はニコッと笑い、僕もそんな好恵に安心した。
僕たちはすっかり日が暮れてしまった河川敷を手をつなぎながらゆっくりと歩いて行った。
19
僕と好恵は手をつなぎながら夕闇の河川敷を歩いていた。
河川敷というと何かとグランドがあるもので, 少年サッカーからラグビーまでいろんな人たちが
それぞれのスポーツにいそしんでいる。
もうそろそろ日も暮れる頃なので強い照明が彼らを照らしつけていた。
「ねぇ、あたしのこと好き?」
「え?そりゃあねえ。」
「ねぇ、好きなの?」
「うん。」
「ちゃんと好きって言って!」
と好恵がこちらを見つめて大きな声で問いかけた。
「どうしたの?好きだよ。大好きだよ!」
「よかった〜」
と、ほっと息をつく好恵。どうしたんだろう、やはりさっきの僕の様子がおかしかったのだろうか?
と、好恵が急に足を止めたので、僕の足も止まる。
その時、好恵が僕の胸に飛び込んできた。
いきなりだったので、え?、と僕は驚き、頭は真っ白、顔は真っ赤、心臓は激しい脈を打ち始めた。
「・・・ずっとこのまま抱いてて。」
「・・・ああ」
僕はゆっくりと腕を好恵の背中に回し、その暖かな体を抱き寄せた。
シャンプーの匂いがする。その心地よさに僕は失神しそうになった。
そのとき、ふとさっきの校舎での事件の映像が僕の脳裏をよぎった。
ひっぱたかれた左頬の痛みがじんじんとが意識されるとともに、早川が最後に言った言葉が思い出される。
なぜこのタイミングで?と僕は自分を責め、必死に思い出さないようにしたが無理だった。
そうして、僕の胸の中のしこりがだんだん熱を持ってきた。
それが10数秒ぐらい続いただろうか。
そのしこりを吹き飛ばしてしまうようなことが僕の前で起こっていることに僕は気づいた。
好恵が僕の胸の中ですすり泣いている。
もはやパニック状態だった。
さっき早川の涙を見て僕の心は大きく揺れているのに、さらに好恵にまで泣かれるとは。
僕は今にも崩れ落ちてしまいそうだったが、必死で自分を支えさらに好恵を支えた。
「どうした?なんで泣くの?」
「グスン、だって、、キヨちゃん、、あたしの方全然向いてない。」
ハートをナイフでぐっさりと刺されているような心境とでもいうのだろうか。
あまりにも的を得すぎている気がして、僕は汗が噴出しそうになるぐらい焦っていた。
「キヨちゃん、あたしのこと愛して。もっと愛して。抱いて。」
痛かった。心が痛かった。どうすればいいのかわからなかった。
ただただ抱き寄せるしか僕にはできなかった。
河川敷というと何かとグランドがあるもので, 少年サッカーからラグビーまでいろんな人たちが
それぞれのスポーツにいそしんでいる。
もうそろそろ日も暮れる頃なので強い照明が彼らを照らしつけていた。
「ねぇ、あたしのこと好き?」
「え?そりゃあねえ。」
「ねぇ、好きなの?」
「うん。」
「ちゃんと好きって言って!」
と好恵がこちらを見つめて大きな声で問いかけた。
「どうしたの?好きだよ。大好きだよ!」
「よかった〜」
と、ほっと息をつく好恵。どうしたんだろう、やはりさっきの僕の様子がおかしかったのだろうか?
と、好恵が急に足を止めたので、僕の足も止まる。
その時、好恵が僕の胸に飛び込んできた。
いきなりだったので、え?、と僕は驚き、頭は真っ白、顔は真っ赤、心臓は激しい脈を打ち始めた。
「・・・ずっとこのまま抱いてて。」
「・・・ああ」
僕はゆっくりと腕を好恵の背中に回し、その暖かな体を抱き寄せた。
シャンプーの匂いがする。その心地よさに僕は失神しそうになった。
そのとき、ふとさっきの校舎での事件の映像が僕の脳裏をよぎった。
ひっぱたかれた左頬の痛みがじんじんとが意識されるとともに、早川が最後に言った言葉が思い出される。
なぜこのタイミングで?と僕は自分を責め、必死に思い出さないようにしたが無理だった。
そうして、僕の胸の中のしこりがだんだん熱を持ってきた。
それが10数秒ぐらい続いただろうか。
そのしこりを吹き飛ばしてしまうようなことが僕の前で起こっていることに僕は気づいた。
好恵が僕の胸の中ですすり泣いている。
もはやパニック状態だった。
さっき早川の涙を見て僕の心は大きく揺れているのに、さらに好恵にまで泣かれるとは。
僕は今にも崩れ落ちてしまいそうだったが、必死で自分を支えさらに好恵を支えた。
「どうした?なんで泣くの?」
「グスン、だって、、キヨちゃん、、あたしの方全然向いてない。」
ハートをナイフでぐっさりと刺されているような心境とでもいうのだろうか。
あまりにも的を得すぎている気がして、僕は汗が噴出しそうになるぐらい焦っていた。
「キヨちゃん、あたしのこと愛して。もっと愛して。抱いて。」
痛かった。心が痛かった。どうすればいいのかわからなかった。
ただただ抱き寄せるしか僕にはできなかった。
18
動揺の胸中を抱え僕は好恵のもとに走った。
「ごめんごめん遅くなったね」
「もー、帰っちゃおうかと思ったよ。」
「ごめん、ホントごめん。アイスでもおごるよ。」
「ホント?やったー。」
と、アイスを買う羽目になってしまった。まぁいいや。
と思いつつ、僕たちは学校の前にあるお菓子屋さんのようなところでアイスを買った。
「そういえば、早川さんとキヨちゃんって仲いいの?」
「えっ?まぁ女子の中だとわりとしゃべる方かな。」
「ふうん、そうなんだ。」
「え?なんで?」
「なんとなく」
と、好恵にとっては何気ない質問だったのかもしれないが、僕は当然かなり焦っていた。
その焦りが好恵に伝わらないよう最大限に気を使わなければならなかった。
まさかさっきの一部始終を見られていたのだろうか?
いや、そんな風でもなかった。そうではなかったと信じるしかあるまい。
「そういえば、脚の調子はどう?」
「そうだね、まだ痛みがあるから当分は補強だね。鬱憤のエネルギーを充填しとくよ。」
「そっかー、我慢だね。」
「そうなるね。そういえば今日いい感じで走ってたジャン。」
「え、そう?アタシもそう思ってたんだよね♪」
「でも相変わらず脚は流れてたけどな。もっと前に前に捉えに行かないとね。」
「へぇ、じゃ今度コーチしてよ。」
「いいよ、明日の練習の時見てやるよ。」
と武田氏がいるにもかかわらずコーチ役を買って出た。
武田氏はどっちかというと放任主義だし、生徒の自主性に任せる感じなので
僕がそういうことをするような雰囲気なのだ。
むしろお互いに声を掛け合わせようという意図も武田氏にはあるのだろう、と僕は勝手に踏んでいる。
暗さが増してくる夕空にカラスの鳴き声が響いていた。
「ごめんごめん遅くなったね」
「もー、帰っちゃおうかと思ったよ。」
「ごめん、ホントごめん。アイスでもおごるよ。」
「ホント?やったー。」
と、アイスを買う羽目になってしまった。まぁいいや。
と思いつつ、僕たちは学校の前にあるお菓子屋さんのようなところでアイスを買った。
「そういえば、早川さんとキヨちゃんって仲いいの?」
「えっ?まぁ女子の中だとわりとしゃべる方かな。」
「ふうん、そうなんだ。」
「え?なんで?」
「なんとなく」
と、好恵にとっては何気ない質問だったのかもしれないが、僕は当然かなり焦っていた。
その焦りが好恵に伝わらないよう最大限に気を使わなければならなかった。
まさかさっきの一部始終を見られていたのだろうか?
いや、そんな風でもなかった。そうではなかったと信じるしかあるまい。
「そういえば、脚の調子はどう?」
「そうだね、まだ痛みがあるから当分は補強だね。鬱憤のエネルギーを充填しとくよ。」
「そっかー、我慢だね。」
「そうなるね。そういえば今日いい感じで走ってたジャン。」
「え、そう?アタシもそう思ってたんだよね♪」
「でも相変わらず脚は流れてたけどな。もっと前に前に捉えに行かないとね。」
「へぇ、じゃ今度コーチしてよ。」
「いいよ、明日の練習の時見てやるよ。」
と武田氏がいるにもかかわらずコーチ役を買って出た。
武田氏はどっちかというと放任主義だし、生徒の自主性に任せる感じなので
僕がそういうことをするような雰囲気なのだ。
むしろお互いに声を掛け合わせようという意図も武田氏にはあるのだろう、と僕は勝手に踏んでいる。
暗さが増してくる夕空にカラスの鳴き声が響いていた。
殴りこみ
最近の口癖は「もうだめだ」「俺には数学は向いてない」「このまま頑張っても今のままだ」
ちょっと待て、最後は絶対おかしい。
頑張ったのか?本当に頑張ったのか?全然頑張ってないんじゃないか?
命を削るほど努力したか?そんなことはないだろう。
むしろなよなよしてどんよりしけこんでるだけじゃねえか。
何が他人を気にしないようにしろ、だ。
他人が気にならないほど無我夢中になっていない証拠だ。
全てを糧にしてまで高みに昇ろうとしていない証拠だ。
体には物理的な限界があるかもしれないけど、心に限界はない。
常にこれからは心は天元突破でいくぞ。
下克上だ。ここからや。もうこの茨の道を裸足で駆け抜けていってやる。
頑張る、って言うんだったらそれぐらいしないと。頑張ります。
ちょっと待て、最後は絶対おかしい。
頑張ったのか?本当に頑張ったのか?全然頑張ってないんじゃないか?
命を削るほど努力したか?そんなことはないだろう。
むしろなよなよしてどんよりしけこんでるだけじゃねえか。
何が他人を気にしないようにしろ、だ。
他人が気にならないほど無我夢中になっていない証拠だ。
全てを糧にしてまで高みに昇ろうとしていない証拠だ。
体には物理的な限界があるかもしれないけど、心に限界はない。
常にこれからは心は天元突破でいくぞ。
下克上だ。ここからや。もうこの茨の道を裸足で駆け抜けていってやる。
頑張る、って言うんだったらそれぐらいしないと。頑張ります。
17
そしてそんな幸せ満点の昼休みを過ごし、堂々と教室に舞い戻る。
「おい、清ちゃん、何やってきたんだよ?」
「おい、ナニかよ!やってきたんだろ、てめえ!」
と、わけのわからんむき出しの洗礼を浴びせてきやがる輩たち。
さすがに勘弁してくれと思っているとチャイムが鳴った。鷲本が現れ英語の授業が始まった。
このときばかりは鷲本で助かったと思った。
とはいえ幸せの眠気が襲ってくる。おやすみ、という暇もなく当てられて冷や冷やする5時限目だった。
そして6時限目の物理が終わり、放課後の部活の時間だ。
おっとそういえば僕は怪我をしていたのだ。今日もせっせと筋トレぐらいしかやることがないという、、。
まぁいい。肉離れはいまさらどうこうできる問題ではないのだ。
今やるべきことをする。それが最も正しいことであるのだ。
みんなのウォーミングアップ中に僕はウエイト場で筋トレを終わらせた。
その頃には30m走、50m走のタイムトライアルが始まろうとしていた。
武田氏がタイムを取り、僕はスタートのピストルを鳴らす係に回った。
佐伯が調子がよさそうだ。30mでは3秒台、50mでは5秒台をコンスタントに出している。
好恵もなかなかよさそう。僕は好恵の走りのフォームもなかなか気に入っている。
ただ、その流れている足をもう少し前に持ってこれればもっと速く走れるのだが。
そうこうしているうちに200mのタイムトライアルも終わり、あとは補強とクールダウンを残すのみ。
みんなが200mの後でへたりこんでいるそばで僕は走る真似をしてみた。
が、やはり痛みはある。まぁ致し方ない。
筋トレの疲れはあるものの、横でみんなが走っているのを見るとスプリンターの血が騒いでくる。
ここはぐっと我慢だ。この憂さを怪我が治れば晴らせるのだから。
幸いそこまで怪我は深くはない。じっくり治し、この機会に自分をじっくり見つめなおすのも悪くない。
そうして午後6時前の夕暮れの中、練習は終わった。
練習が終わり、まぁご想像の通り好恵と一緒に下校だ。
僕は着替えを済ませ、女子更衣室のある体育館の方角へ歩いていく。
まぁこればっかりは顔がにやけてきてしまうので、ここもぐっと我慢してクールな男を演じるのだ。
他の女子たちは着替えて出てくるのに、好恵はなかなか出てこない。
「さよならー、キヨシ先輩!」「さよなら〜、キヨちゃんw」
とお調子者の中島美恵が僕をおちょくってくるのを適当にあしらって好恵を待つ。
ほとんどの女子部員が去ってしまった中、最後に好恵が現れた。
「ごめ〜ん。待ったー?」
「いや、全然待ってないよ。着替えるのいつも遅いの?」
「ううん、そうでもないんだけどね。」
ともうこんなどうでもいい会話すらウキウキだ。もうたまんないね。
そして二人で手をつないで、そう手をつないで正門のほうへ歩いていく。
そのとき、僕は突然トイレに行きたくなった。これはちょっと我慢するのは無理そうだ。
「ごめん、ちょっと校舎のトイレ行ってくるわ。待っといて。」
と言い残し、僕は校舎へ急いだ。
用を足しすっきりした僕は好恵の待つ正門へ行くため、まずは下駄箱に向かった。
誰もいない校舎。鍵が閉まり電気が消えている教室に夕日が差し込む。
なんだかセンチメンタルだ。
下駄箱にさしかかると、そこに階段から女子が降りてきた。しかも泣いているようだ。
「お、おい。」と声をかけようとすると、その女子はこちらをフッと見た。
なんと、早川だった。
「あ、あれ?早川じゃん。どうしたんだよ?」
と、声をかけるも、早川はトイレのほうにそそくさと立ち去って行こうとした。
僕は走って追いかけ、
「ちょっと待てよ。どうしたんだよ。何もいわずに立ち去られたんじゃ心配になるじゃねえか。」
と、なんかちょっとうっとうしいことを言ってしまったのかもしれない。
「うるさいな。グスン。ほっといてよ。」
と、また立ち去ろうとする早川。僕はとっさにその早川の腕をつかんだ。
「やめてよ。離しなさいよ。」
「待てっつってんだろうが。どうしたんだよ、俺でよければ話してみろよ。」
と、普段の俺なら絶対言わないような親身な発言をしていることにこのときは気づかなかった。
「もういいの。ほっといてよ、、。グスン。」
「え?何があったんだよ?生徒会か?」
と言うと、
「あんたには関係ないでしょ!」
と早川は大声を上げ、思い切り僕の頬を平手打ちした。
パーンと爽快な音が誰もいない校舎で鳴り響く。早川はトイレに去っていった。
数秒間僕は呆然としていた。ふと我に返り、好恵を待たせていることを思い出す。
いかんいかん、と心の整理がつかないまま僕は靴を履き正門へと急いだ。
「おい、清ちゃん、何やってきたんだよ?」
「おい、ナニかよ!やってきたんだろ、てめえ!」
と、わけのわからんむき出しの洗礼を浴びせてきやがる輩たち。
さすがに勘弁してくれと思っているとチャイムが鳴った。鷲本が現れ英語の授業が始まった。
このときばかりは鷲本で助かったと思った。
とはいえ幸せの眠気が襲ってくる。おやすみ、という暇もなく当てられて冷や冷やする5時限目だった。
そして6時限目の物理が終わり、放課後の部活の時間だ。
おっとそういえば僕は怪我をしていたのだ。今日もせっせと筋トレぐらいしかやることがないという、、。
まぁいい。肉離れはいまさらどうこうできる問題ではないのだ。
今やるべきことをする。それが最も正しいことであるのだ。
みんなのウォーミングアップ中に僕はウエイト場で筋トレを終わらせた。
その頃には30m走、50m走のタイムトライアルが始まろうとしていた。
武田氏がタイムを取り、僕はスタートのピストルを鳴らす係に回った。
佐伯が調子がよさそうだ。30mでは3秒台、50mでは5秒台をコンスタントに出している。
好恵もなかなかよさそう。僕は好恵の走りのフォームもなかなか気に入っている。
ただ、その流れている足をもう少し前に持ってこれればもっと速く走れるのだが。
そうこうしているうちに200mのタイムトライアルも終わり、あとは補強とクールダウンを残すのみ。
みんなが200mの後でへたりこんでいるそばで僕は走る真似をしてみた。
が、やはり痛みはある。まぁ致し方ない。
筋トレの疲れはあるものの、横でみんなが走っているのを見るとスプリンターの血が騒いでくる。
ここはぐっと我慢だ。この憂さを怪我が治れば晴らせるのだから。
幸いそこまで怪我は深くはない。じっくり治し、この機会に自分をじっくり見つめなおすのも悪くない。
そうして午後6時前の夕暮れの中、練習は終わった。
練習が終わり、まぁご想像の通り好恵と一緒に下校だ。
僕は着替えを済ませ、女子更衣室のある体育館の方角へ歩いていく。
まぁこればっかりは顔がにやけてきてしまうので、ここもぐっと我慢してクールな男を演じるのだ。
他の女子たちは着替えて出てくるのに、好恵はなかなか出てこない。
「さよならー、キヨシ先輩!」「さよなら〜、キヨちゃんw」
とお調子者の中島美恵が僕をおちょくってくるのを適当にあしらって好恵を待つ。
ほとんどの女子部員が去ってしまった中、最後に好恵が現れた。
「ごめ〜ん。待ったー?」
「いや、全然待ってないよ。着替えるのいつも遅いの?」
「ううん、そうでもないんだけどね。」
ともうこんなどうでもいい会話すらウキウキだ。もうたまんないね。
そして二人で手をつないで、そう手をつないで正門のほうへ歩いていく。
そのとき、僕は突然トイレに行きたくなった。これはちょっと我慢するのは無理そうだ。
「ごめん、ちょっと校舎のトイレ行ってくるわ。待っといて。」
と言い残し、僕は校舎へ急いだ。
用を足しすっきりした僕は好恵の待つ正門へ行くため、まずは下駄箱に向かった。
誰もいない校舎。鍵が閉まり電気が消えている教室に夕日が差し込む。
なんだかセンチメンタルだ。
下駄箱にさしかかると、そこに階段から女子が降りてきた。しかも泣いているようだ。
「お、おい。」と声をかけようとすると、その女子はこちらをフッと見た。
なんと、早川だった。
「あ、あれ?早川じゃん。どうしたんだよ?」
と、声をかけるも、早川はトイレのほうにそそくさと立ち去って行こうとした。
僕は走って追いかけ、
「ちょっと待てよ。どうしたんだよ。何もいわずに立ち去られたんじゃ心配になるじゃねえか。」
と、なんかちょっとうっとうしいことを言ってしまったのかもしれない。
「うるさいな。グスン。ほっといてよ。」
と、また立ち去ろうとする早川。僕はとっさにその早川の腕をつかんだ。
「やめてよ。離しなさいよ。」
「待てっつってんだろうが。どうしたんだよ、俺でよければ話してみろよ。」
と、普段の俺なら絶対言わないような親身な発言をしていることにこのときは気づかなかった。
「もういいの。ほっといてよ、、。グスン。」
「え?何があったんだよ?生徒会か?」
と言うと、
「あんたには関係ないでしょ!」
と早川は大声を上げ、思い切り僕の頬を平手打ちした。
パーンと爽快な音が誰もいない校舎で鳴り響く。早川はトイレに去っていった。
数秒間僕は呆然としていた。ふと我に返り、好恵を待たせていることを思い出す。
いかんいかん、と心の整理がつかないまま僕は靴を履き正門へと急いだ。





